第20章 されど空の青さを知る
影山 side
「………」
谷地さんの家で勉強しながら、頭の片隅でずっと美里のことを考えていた。
アイツ、なんで昨日泣いてたんだ?俺、そんなやべえこと言ったか?急に昔の話なんかし始めて…勉強に集中出来ない理由なんてどう考えたって本人に言えるわけがねえのに、あんなん聞かれてなんて答えるのが正解だったんだよ。
「あー…クソッ」
「影山くん、分からないとこあった?」
「…いや、大丈夫ス」
「なんだよ影山、今日機嫌悪くね?」
「あ?別に悪くねえ」
「ずっとため息ついてるじゃん」
「ついてねえよ」
「眉間もこんな風にギュッて皺寄ってるし」
「元々こんな顔なんだよ、っせえな」
「いやお前、絶対なんかあっただろ」
「なんもねえって」
「隠しても分かんだぞ、俺には!」
「は?…んだよ気持ちわりーな」
「部活ん時もサーブミスってたじゃん」
「っ…調子が悪かったんだよ」
「ビブスも裏表反対に着てたし」
「もういいだろ!」
「ゲーム中も、なーんか別のこと考えてる感じだったしよぉ」
「うっせえな、俺がバレーしてる時にアイツのことなんか考えてるわけねえだろーが!」
「「アイツ…?」」
「!」
──やべっ!
俺はバッと自分の口を押さえるがもう遅かった。ニヤニヤとした目の日向が身を乗り出して俺の顔を覗く。
「“アイツ” って、何のことかな影山くん」
「なっ、んなこと言ってねえよ」
「今言ってたよね?谷地さん」
「…言っ、てたね」
「〜〜っ!」
「誰のことなんだよー教えろよー!」
「誰でもねえ!」
「はっ…まさか影山……彼女とか!?」
「ちっげえよ!やめろボゲ日向!」
「じゃあアイツって誰なんだよ!?」
「だから、誰でもねえって!」