第20章 されど空の青さを知る
私は解き終えたテーピングを丸めてゴミ箱に投げた。
『はいありがと、お疲れ様』
「おう」
テストまで残り1週間とちょっと。来週の月曜日からテスト週間に入るため、バレー部も部活動停止になる。
『いよいよテスト週間だね、勉強はどう?』
「まあまあだな」
『飛雄…谷地さんに教えてもらってるって聞いたけど、ほんと?』
「ああ」
やっぱり本当だったんだ。
『あ〜あ、私も谷地さんに教わりたいなぁ』
「必要ねえくせに、嫌味かよ」
『ちがうよ、勉強じゃなくて…勉強の教え方』
「……は?」
『だって谷地さん、教え方上手なんでしょ?私と違って』
「んなこと一言も言ってねえだろ」
『でも中学の時に私が勉強教えてたら、もういいって嫌そうにしてたじゃん…あれ下手だったからなんでしょ?』
「別にそういうんじゃねえよ」
『じゃあなんで?』
「いいだろなんだって」
『よくない!教えて』
「お前が近くにいると、集中…できねえ、から」
『はあ?私、騒がしくしてないじゃん!』
「…騒がしいとかじゃねえよ」
『違うならなに?』
「あぁ…いや、」
『教えてよ』
「っ…ああクソ、もういいだろこの話は!」
『…なにそれ、やな感じ!もう絶対勉強教えてあげないから!』
「頼んでねえだろ」
『っ…あーはい、そうですね失礼しました』
私はイライラした気持ちのまま布団に潜って丸くなった。
「おやすみ」
『………』
「おい、おやすみって」
私がそのまま無視し続けていると、急に布団がガバッと捲られた。
『!?』
「…は?こんなことで泣くなよ、バカか」
『…っ…うっさいな!ムカつきすぎて泣けてきたの!勝手に布団捲らないでよ飛雄のえっち!』
「バッ、バカじゃねえの!?このバカ!」
『バカって言う方がバカなんだよ!』
「お前が無視するからだろーが…!」
『わかったよ、そんなに私のおやすみが聞きたいなら言ってあげる、お・や・す・みっ!』
私はそう言って飛雄の手から布団を取り返し、再びくるまった。
「…悪かったよ」
布団の上からそんな声が聞こえてきたけど、私は気が付かないふりをした。腹立たしいやら悲しいやら、飛雄が電気を消してからも私はしばらく寝付くことが出来なかった。