第20章 されど空の青さを知る
金曜日の夜。
私は飛雄の手を借りてテーピングの練習をしていた。予防や処置など様々な状況を想定して、テーピングを巻いていく。
飛雄はテーピングがあると指先の感覚が狂うからと、私の施したテーピングのままバレーをしたことはない。飛雄に感想を聞かせてもらえたら良かったけれど、そればかりは仕方のないことだ。
だから最近では、主に西谷先輩やツッキーにテーピングを頼まれた時にフィードバックをもらっていた。
『どう?』
「よく固定されてる」
『キツくない?』
「ちょうどいい」
『そっか』
「巻くの早くなったな」
『そう?』
「あぁ」
『飛雄が練習に付き合ってくれるからだよ、ありがとう』
飛雄の手に巻かれたテーピングを解いていく。
最初のうちはこれに勿体なさを感じていたが、父に相談をしたら、本番の想定で練習をしないと意味がない、例え練習であっても惜しみなく使うようにと言ってもらえたのでそうさせてもらっていた。
おかげで黒尾さんの時にも、限られた時間の中で焦らずに出来たんだよなきっと。
ありがとう、お父さん。