第20章 されど空の青さを知る
わずかな街灯が照らす暗い帰り道。私たちはいつも通り並んで歩いていた。カエルの合唱が遠くから聞こえてくる。
『私たちの匂いって、どんなだろ』
「さあ?柔軟剤だろ」
『同じ洗濯機で洗ってれば、一緒にもなるか』
「そーだな」
『ねえ、私甘い匂いなんてする?』
「あ?」
そう言って飛雄は、私の首あたりに顔を近づけた。髪がサラリと首筋に当たってピクッと身体が震える。
「………」
『どう?』
「…鈴木さんの匂いがする」
『は?そりゃそうでしょ、何言ってんの』
「るせえな、それ以外の感想がねえんだよ」
『じゃあ、次影山くんのね』
私が立ち止まると飛雄も立ち止まった。背伸びをして首元に顔を近づけようとするが上手くいかない。
『ちょっと、屈むとかしてくれてもいいんじゃない!?』
「へっ、届かねえなら諦めろ」
『私のは嗅いだくせに!不公平!』
「…ったく、ほらよ」
私の目線まで屈んだ飛雄の首筋に顔を近付けてスンッと嗅ぐ。
『………あ』
「なんだよ」
『…影山くんの匂いがする』
「おめーも同じこと言ってんじゃねえかよ」
『それ以外の感想がなかったんです!』
落ち着くとか安心する匂いだなんて感想、多分変だよね。