第20章 されど空の青さを知る
谷地 side
「……鈴木さん?」
私は気になって声を掛けた。
『わぁああっ!今ので第2セットの16点目の攻撃がどんな展開だったか忘れちゃった!すみません…!』
「「「えっ」」」
『コーチ!今日誰もスコアつけてないですよね?』
「つ、つけてないな…」
『ちょ、覚えてるところ書き出します!…たしか、澤村先輩がレシーブの影山くんトスで旭先輩…いや、これ12点目だな…んー…』
鈴木さんはベンチまで走るとガサガサと紙とペンを取り出して床に丸くなった。
「…猫?」
「たしかに」
みなさんはそんな鈴木さんの姿を微笑ましく見ていた。みんなに愛されているんだなぁ、鈴木さんは。たしかに、自分に好意を寄せている人よりも、チームのことを優先してくれるマネージャーなんて好印象だろうなぁ。
「…あれ」
ふと床を見ると、さっきの8番さんの渡した紙が落ちていた。ポケットに入れ損ねたのかな…私が拾おうか悩んでいると、それに気付いたグレーの髪の先輩が紙を拾い上げた。そして、それを手のひらでクシャッと潰した。
「……あっ、」
私と目が合った先輩は、にっこり笑って人差し指を口にあてた。その王子様みたいな雰囲気に私はコクコクと頷いた。
鈴木さんやっぱり、愛されている…?んだなあ。