第20章 されど空の青さを知る
影山 side
コトッと目の前に置かれたマグカップには、ティーバッグが沈んでいる。美里は何故か落ち着かない様子でそれを上下させながら俺を見た。
『飛雄こそ、キジマさんはどうなの?』
「……は?なんで」
『なんでって…な、なんとなく?』
なんでか知らねえけど、クラスのヤツも時々そんな話を振って来る気がする。
「どうもなにも、同じクラスのヤツってだけだ」
『でも、仲は良いんでしょ?』
「いや別に」
『嘘……手、握ってたじゃん』
「手?いつ?」
『球技大会のとき!』
「?……覚えてねえな」
『はぁああ!?』
「んだよでけえ声出して!びっくりすんだろーが!」
『びっくりはこっちのセリフだよ!何覚えてないって!』
「覚えてねえもんは覚えてねえんだから仕方ねえだろ」
『してたじゃん、こう…ギュッて』
「……?」
『はー、もう意味わかんない』
「お前、何怒ってんだよ」
『怒ってない!』
「怒ってんだろ」
『怒ってないってば!
………あちっ、』
紅茶に口をつけた美里はその熱さに急いでマグカップを置いた。
「そそっかしいな、大丈夫かよ」
俺がそう声を掛けると、涙目の美里は火傷した唇をぺろっと舐めながら俺を見た。
「!」
ドクンッと心臓が跳ねる。
「クソッ…」
俺はテーブルに勢いよく額をぶつけて突っ伏した。
『…どうしたの飛雄』
「……ホントお前ムカつく」
理不尽な苛立ちが収まるまで俺はしばらくそのまま動けなかった。