第20章 されど空の青さを知る
影山 side
キッチンに立つ美里を見て、俺はずっと気になっていたことを口にした。
「そーいやお前、国見は大丈夫だったのか」
『…え?大丈夫って…どういう意味?』
「さあ」
『はあ!?自分が聞いたくせに』
「あいつのこと、振ったんだよな?」
『…うん、まあ…だって、私と国見くんじゃ好きの種類が違うからさ』
「好きの種類ってなんだよ」
『友情と恋愛…みたいな』
──「お前のことが好きだ」
あの時の国見は、これまでに見たこともないような別人の顔をしていた。色々と腹括ってマスっていう、覚悟したような目。
正直俺は、今更美里が他の誰に告られてようが全く気にもならないし焦りもしない。…でも、今回は何故か少しだけいつもとは違う気分になった。
『練習試合の日に国見くんがそういう意味で私を好きだって初めて知ったんだけど、その後も国見くんの気持ちから逃げるように会えば普通に話してたんだ。…でも国見くん、意識されないで、なかった事にされたのがしんどかったって…それであの日、改めて好きって』
「………」
多分それは、美里が国見のことをめちゃくちゃ意識してると気付いたから。
バスに戻ってきた時の顔を見てすぐに分かった。好きってどんな感じなのかな、なんて言いながら顔を赤らめて少女漫画を読んでいたこいつが、あの時、今まさにそれを体験してきましたと言うような顔をしていたから。だからこそ俺は、美里が国見を振ったと聞いて理解が出来なかった。
『仲の良い人に好きだって言われるのは初めてだったからさ、その…すごく戸惑って………ねえ、この話もういい?』
恥ずかしそうに目線を下げた美里に俺は「あぁ」とだけ返事をした。多分、他にも聞きたいことはあったと思うけど、これ以上コイツのこんな顔を見てると腹が立ちそうで俺は早々に会話を切り上げた。
タイミングを見計らったように、カチッとケトルが音を立てる。美里はマグカップにお湯を淹れて戻ってきた。