第20章 されど空の青さを知る
それからしばらくして、お互いの皿が空になった。すると飛雄はいつものように自分の皿と私の皿を流しへ持って行く。
『ありがと』
「おう」
ジャージの袖をグイッと捲りあげて、スポンジを手にした飛雄を見てふと思う。
『…飛雄、良い旦那さんになりそうだよね』
「はあっ!?」
ガチャッと皿が音を立てる。
『えっ割った!?指、大丈夫!?』
「…割れてねえから平気」
『良かった…びっくりした』
「びっくりしたのはこっちだっつーの、急に変なこと言いやがって」
『ごめんごめん思ったことが口に出てた。でもさ、いただきますは待ってくれるし、美味しいってご飯食べてくれるし、お皿も洗ってくれるじゃん?』
「…当たり前だろそんなの」
『当たり前じゃない人も多いんだってテレビでやってた』
「そういうなら、お前だって良い奥サンになんじゃねえの?」
『お、奥さん!?飛雄の口から奥さん!?』
「なんだよ、おかしくねえだろうが別に!」
『…おかしくないけどなんかおかしい』
「っせえな!」
洗い終えた飛雄は、流しにかかったタオルで手を拭いてこちらに戻ってきた。
『紅茶淹れる?』
「美里が飲むなら」
『じゃあ淹れるね』
「ん」
新しいお水をケトルの中に入れてスイッチを入れた。