第20章 されど空の青さを知る
菅原 side
『…になりました。よって、常に b(a - 1) - 2a + 2 > 0 なのでこれはつまり、ab + 2 > 2a + b という不等式が成り立つことを示しています。以上が証明です、田中先輩合ってますか?』
「…ァ…アッテ、マス、タブン」
「お前ちゃんと聞いてたのかよ!」
「なんだ鈴木今の!教えてくれよ!」
「お前はちゃんと聞いとけよ!」
「す、すっげえ鈴木さん!…何言ってんのか全然分かんなかったから、おれ途中からずっと鈴木さんの顔見てた」
「たしかになんかの暗号みたいだった、し…それ俺もだよ日向」
「…キミさ、やっぱバケモンでしょ」
『なっ!?ひどい』
「鈴木、なんで高2の数学解けるんだよ!」
『受験勉強をしていた時、高校に入学したらどんな問題が出てくるのか興味本位で調べてみたことがあったんです。勉強についていけるか不安で…』
「ついていけない可能性がどこに…」
「てか調べただけでここまでの理解度ってなに?」
「縁下、ちなみに今のは合ってたの?」
「答えには鈴木の導き出した証明の一部分だけが載ってます、鈴木のほうが詳細まで証明されてますね」
『あーすみません!くどかったですね』
「ううん、俺の証明への理解度が爆上がったよ、ありがとう」
『いえ!嬉しいです…って、すみません!みなさんの勉強の邪魔を…!』
「そんなことないし、逆にすげえの見せてもらったよな」
「うん、鈴木やべえ」
「影山?…おーい影山?」
「………」
「王様、頭ショートしたんじゃない?」
…そういえば、なんで鈴木といるくせに影山は勉強が出来ないんだろう?単純な疑問が頭に浮かぶ。こんなに近くに頭良いヤツがいるなら、なんでも聞いて教えてもらえばいいのに。
まぁ近くにって言っても、逆にあれ以来2人のそういうところは本当に見ていないんだよな…付き合ってるのかそうじゃないのか。
「…不思議だ」
「な、不思議だよな」
「え、今声に出てた?」
「ああ、ハッキリと」
俺は、あははと誤魔化して西谷の隣に座り直した。