第20章 されど空の青さを知る
菅原 side
「だああぁあ!スガさん、すんませんココ教えてください!」
「どこ?…あー、これかぁ…ごめん俺証明が苦手で…大地、数Ⅱの不等式の証明教えられる?」
「田中スマン…俺も説明出来るほどじゃない」
「旭さん!」
「お、俺には聞かないでくれ!」
「旭より鈴木のほうがわかったりしてな」
「大地さんマジすか!?」
「いや、さすがに冗談」
「なあ鈴木〜?」
俺が声をかけると、鈴木は小動物のように振り返った。
『はい?』
「不等式の証明ってわかる?」
「おいスガ」
「聞くだけだって!」
『不等式の証明って、どんな問題形式のですか?』
「田中、問題」
「あー… 次の不等式を証明せよ、a > 1 , b > 2 のとき、ab+2 > 2a+b」
田中が問題を読み上げると、鈴木はカバンからノートとシャーペンを取り出して、今の問題を書き出した。
えっ…一瞬で覚えたのかよ!?
『なるほど…ちょっとやってみますね。えっと、まずこれを証明するためには、aとbがそれぞれどんな条件を満たしているかが重要になるのですが、今回田中先輩の問題には、a > 1とb > 2とあるのでそれを元に証明していきます』
「え…鈴木?」
「……まじ?」
鈴木はその問題をさも当然のように解き始めた。
みんな呆然とその様子を見ている。当たり前だ、だって鈴木は高校に入学したばかりの高校1年生で、この問題は高2のものなのだから。まだ見たことも習ったこともないはずの問題は、鈴木の小さな手に握られたシャーペンで徐々に展開されていく。