第20章 されど空の青さを知る
次の日の部活後、着替えを済ませた私は男子の部室へと向かった。部室の前でノックをすると、菅原先輩がドアを開けてくれた。
「おー、鈴木!」
『お疲れ様です、失礼します』
「お前ら、強力な助っ人がきたぞ!」
靴を脱いで中に入ると、田中先輩と西谷先輩を2、3年生、飛雄と日向くんをツッキーと山口くんが見ていた。
「鈴木さ〜ん、ありがとう!」
『本当にやってるんだね、偉い』
「へへへ」
「ちょっと、褒めるにはまだ早いよ。鈴木コレ見て」
私はツッキーの隣に座って日向くんの解答用紙を見た。
『現代文?あっ、このテスト私たちもやったやつか!』
「そう、キミが満点だったやつね」
「え」
「は」
『なになに?…ことわざを完成させなさい、鬼の目にもかな…金棒!?』
「痛い!目がァ!」
「お前、鬼に酷いんじゃないか?」
「鬼に金棒、だと思ったの?問題文は読んでないのかな」
「うっせーなーもー!」
『…く……っ、』
「鬼って見て、問題もよく読まないでガーッて書いちゃったんでしょ、ホント単細胞」
「そうだ、お前はもうちょっと落ち着けよそそっかしいんだよ」
「お前らなんで一言余計なの!?そんで鈴木さん笑いすぎ!笑うならせめて声出して!」
『ごめ…っ想像しちゃった、鬼の目に金棒がゴーンって…ッ』
「鈴木やめて!俺もジワジワきてるから!」
「はぁ…次の問題、読んで」
「おう…井の中のホニャララおおうみを知らず」
「大きな海でたいかい、ね」
「これ分かんなかったんだよな〜」
『井の中っていうのは井戸の中のことで、自分の狭い知識や経験にとらわれて、他に広い世界があるのを知らないっていう意味のことわざだよ』
「そうなのか…なんかすげえかっけえ!井戸の中…影山コレわかった?」
「あ゙?…ったりめーだ、井戸の中にいるっつったら答えは1個しかねえだろ」
「王様、言ってみなよ」
「貞子だろ」
「おお、たしかにそうか!」
「ぶっ…は…影山、なんでドヤ顔……っ!」
『…ぁ……ッ…!』
「ちょっと、もう話になんないんだけど!」
「お、お前ら!…っ、大喜利やってる場合じゃないだブフォッ」
「やめてくれぇ、スガさんが笑うと俺たちも釣られちまう!」