第20章 されど空の青さを知る
『あっ、澤村先輩お疲れ様です…!』
「鈴木さえ良ければ、話聞くぞ?」
『あの……実は、』
私は悩んでいたここ最近のことを簡潔に澤村先輩に話した。すると澤村先輩は、ポンッと手を打って納得したような顔を見せた。
「あぁ〜なるほど、あの話はここと繋がるわけか」
『あの話、ですか?』
「あースマンなんでもない…ただ、前に武田先生が東京遠征の話をしてたろ?」
『はい』
「遠征となれば合宿の時もそうだが、マネージャーには負担がかかる。だから清水は余計に鈴木を心配してるんだと思う…お前はマネージャー業に、練習参加に頑張ってくれてるからさ」
『そ、そんな!私が練習に参加させてもらうようになってから、明らかに潔子先輩の負担も増えてしまって…私本当はもっと頑張らなくちゃいけないんです』
「ハハッ、ほんと鈴木は真面目だな!…まあその辺は大丈夫、清水も色々と動いてるみたいだから」
『?…大丈夫でしょうか』
「安心して先輩を信じていなさいよ」
『……はい』
「このドリンクカゴ、持って行っていいのか?」
『わっ!それ重いです、私が持っていきますから!』
「ハハ何言ってんの、重いなら尚更俺に任せろって」
『でも!』
「…鈴木が頑張ってること、みんな知ってるぞ」
『!』
「だから…たまには、他人に甘えること」
『………』
「いいな?」
『…っ、はい…ありがとうございます』
すると、ニコッと微笑んだ澤村先輩は、ボトルの入ったカゴを軽々と持ち上げて歩いていった。
心のぽかぽかを感じながら、私はその後ろ姿を見つめた。
『……甘える、か』
なんだかくすぐったいその言葉の響きに、思わず笑みがこぼれた。