第19章 能ある烏は翼を隠す
烏養 side
「………っ!」
リベロはその場から1歩も動くことが出来ずに、ただ背後を高く跳ね上がるボール見つめていた。
これだ、間違いない。
俺があの日見たサーブは間違いなくこれだ。
そして、高めの位置でネットを通過した打球。それは高校男子用ネットの高さに合わせたサーブを打ったという証拠だった。鈴木は、このサーブが先程話していた研究と調整の賜物であることを今目の前でハッキリと証明して見せたのだ。
「…鈴木良いサー」
『あぁあ〜サーブトス低い!すみません!』
鈴木はそう言いながら俺に頭を下げて次のボールを受け取ると『腕か…いや助走か…』となにやらブツブツと独り言を言っている。
「……そう…だったか?」
「…ちょっと何言ってるか分かんないですね」
「うおぉおお!クソ羨ましいッ!鈴木のサーブ取ってみてえ〜ッ!」
騒ぎながらもちゃんと鈴木をライバル視する西谷を見て、俺の目は間違っていなかったと確信した。今のはスーパーリベロが沸くほどのサーブだ。
…そして次の1本は恐らく別のヤツが沸き立つサーブになるだろう。
「おい鈴木、あっちのも見せてやれ」
『……あっち、ですか?』
「“止める”方」
俺がそう言うと鈴木は心底驚いた顔をして俺を見た。…ありゃあ、なんでお前が知ってんだって顔だな。頭にハテナを浮かべながらエンドラインに立った鈴木は、今度は後ろに5歩下がった。