第19章 能ある烏は翼を隠す
烏養 side
そして鈴木は、エンドラインから8歩ほど下がりコートを振り返った。
「烏養さん、これさっきの影山のサーブだと思います」
「……ああ」
ボールの構え、サーブトスに入る際の右腕の伸ばし方、左手の位置。
それは、思わず笑っちまうくらいに影山のサーブと似通っていた。あの日見えなかったモーション…目の前の光景に感動すら覚える。
そして、高くサーブトスを上げた鈴木は、シューズをキュッと鳴らしながら小気味よい音を立ててエンドラインギリギリを踏み切った。
「……おぉ」
高く飛び上がった小さな体は空中で弓のようにしなる。
バシーンッ
放たれた強烈なサーブはリベロの真横を綺麗に抜け床に跳ねた。