第19章 能ある烏は翼を隠す
「その覚悟が出来ねーなら」
「……っ、」
コーチの言葉を遮るように1人が手を挙げた。
「私、2年で現リベロです…負ける気はありません」
「だとよ、鈴木」
『……』
「あのリベロに2、3本サーブ打ってやれよ」
『え?でも…』
「言っておくが、お前はマネージャーとして非常に優秀だ。コーチの立場からしても、どこにも渡したくない逸材だと思ってる。そんで俺はきっと、お前が選手だったとしても同じことを思うだろう。…だから教えてやれよ、お前に相応しい場所がどこなのか、そもそもお前の行く価値がこの女バレにあるのかどうかを」
『………はい』
私はコーチの言葉に弾かれるようにコートの中へ入った。コーチがそんなふうに私のことを評価してくれていたなんて知らなかった。嬉しい、嬉しくて仕方がない。
ここまで言い切ってくれたコーチの言葉に恥じないような私を見せなくちゃ。
『………』
私は球技大会の時よりも高く張られた高校男子用のネットを見上げた。