第19章 能ある烏は翼を隠す
「……あの噂の発端が誰かは分からないけど、今言われた通り女バレの誰かなんだと思う…謝って許されることじゃないけど、鈴木さん本当にごめんなさい」
「この前の大会でも鈴木さんにはそのことで嫌な思いをさせちゃったもんね…本当にごめんね」
『…いえ、』
「…なあ、鈴木さんは女バレに行きたい?マネージャーじゃなくて選手やりたい?」
『………』
「俺は鈴木さんの気持ちが聞きたい」
真っ直ぐな目で私を見つめる日向くん。私の気持ちは最初から全く揺れていない。
『お誘い頂いたことはとても光栄なことだと思っています…でも私は、これまで通りマネージャーとして皆さんのことを支えていきたいです』
私がそう言うと、みんなはパッと嬉しそうに笑ってくれた。
「だ、だけど!鈴木さん、バレー上手だった!私たちバレー部だって、みんなびっくりしたんだよ?澤村たちもだよね!?……そんな人がマネージャーでいるなんて、すごく…すごく勿体ないよっ!」
「勿体ないかどうかは、マネージャーとしての鈴木を知らない人間が決める話じゃねえんじゃねーの?」
「烏養さん…」
「あ〜スマン、学生同士の話に首突っ込むのは気が引けたんだが…聞き捨てならなくてな」
「…たしかに私たちはマネージャーとしての鈴木さんを知らないと思います…でも、チームが強くなるって分かっていてその可能性を諦められません!」
「ちなみにこいつのポジションはどこを考えてる?」
「えと…レシーブが上手だったし、身長のことを考えるとリベロ…がいいと思います」
「ほう…そうか。それなら1、2年のリベロに聞く。もしこいつが女バレに入部すれば、間違いなくレギュラー入りするだろう」
『へっ!?そんなの無…』
「そうなれば、誰かが確実にレギュラーから落ちる」
「「「!」」」
「…その覚悟はできてんのか?」
コーチがそう言うと、女バレの人たちは顔を見合わせて俯いた。