第19章 能ある烏は翼を隠す
「いや…いやいやいや……そうだ、影山はそれで納得出来んの?」
「…俺スか?」
「たしかに!お前、サーブ完コピされてたじゃねえか」
「田中…完コピって、ダンスみたいに言うなよ」
「でもたしかにあれは完全に王様のサーブでしたよね」
「見ただけでお前のサーブが出来たって言ってんだぞ、うちのマネージャーは!」
すると、飛雄は顎に手を当てて少し悩む素振りをしてからこう言った。
「鈴木さんがそう言うなら、俺は信じます」
『…影山くん!』
そりゃそうだよね、あんたは知ってんだから。逆にそう言ってくれなきゃ困る。
「それに俺だってサーブは及川さんのサーブ見て覚えましたし、見て出来るのなんて別に普通じゃないですか」
『………』
おいおい、なんかちょっと張り合ってないか?この負けず嫌いめ。
「ちなみにさっき少しだけ西谷に説明してたけど、見たら出来るってどういう原理?」
縁下先輩は真面目な顔をしてそう言った。
『はい、例えばサーブだとしたら、エンドラインからの距離やボールの構え、サーブトスの角度や高さと踏み切りの位置…あとは腕の振り上げの角度や体のしなりなんかを何度も見て平均をとり、どうしてその高さなのか、どうしてその位置なのかを研究します。あとは自分の身長や体格でそれを再現するには何をどれくらい調整すればいいのかを計算して自分の体に落とし込みます、それでやってみて出来なければまた調整を………って、みなさん?』
みんな、ポカンと口を開けて私を見ていた。
「…そうか忘れてた、鈴木って頭良いのか」
「研究調整計算って…それホントにバレーなの?」
「…まぁひとつ言えるのは、いくら研究したところでそれを再現する運動能力がなければ意味がねえってことだ…そしてその逆もまた然り」
「ってことは鈴木はその両方を兼ね備えている…と」
「ああ、そういうことなんだろうな……あ〜先生早く来ねえかな…」
コーチはそう言って頭をガシガシとかいた。
「先生?武ちゃんに用事ッスか?」
「あーいや、こっちの話だ……よーし、お前ら練習」
「失礼します!」
体育館に突然女子の声が響き、みんな扉に目を向ける。