第19章 能ある烏は翼を隠す
『どういう、とは…?』
「青城にいる幼なじみのバレーを応援してたってのは知ってるけど、お前があんなにバレー出来るっていうのは完全に初耳なんだよね」
「……青城の幼なじみ?」
コーチは目を丸くして私を見た。
「この前鈴木に告ってた青城の13番、鈴木の幼なじみなんですって」
「え?だってお前…」
『あ、…ははは』
「あっ…そ、そうなのか」
私が苦笑いでコーチを見ると、何かを察したように話を合わせてくれた。
「それで?」
『いや…その、幼なじみの練習相手というか、サポート程度にバレーをするくらいで、みなさんみたいにガッツリ経験者というわけではなくてですね…もっとほんのり?というか、ふわっと?やってきた感じです』
「あれを見せられたあとでそう言われてもな…」
「お前レシーブめちゃくちゃ上手かったぞ!」
「スパイクもジャンプ高くてすごかった!!」
『それは…レシーブは西谷先輩のレシーブを、スパイクは日向くんのジャンプを毎日たくさん見てきたからですよ!本当に決して私の経験ではないんです』
「ん?見てきたからってどういうこと?」
『練習で毎日見てるじゃないですか、それであぁこうやるのか…と』
「はあ!?見ただけでやったってのかよ!」
『もちろん頭でもたくさん考えてます!』
「サッパリわかんねえ!」
『だから』
「いや、さすがに経験じゃないって言っても、ホラ…これまでに出た試合とかさ」
『私、バレーの試合は体育以外で出たことがありません』
「「「はぁっ!?」」」
「うっそだー!」
『本当ですって!スパイクとサーブは、試合でやったの今日が初めてでしたし、上手くいって結果オーライでしたけど…危うく恥かくところでした』
「……それ、どこからどこまでが本当の話?」
『最初から最後まで全部本当の話です!』
強いて言うならば、国見くんが幼なじみだというところだけ本当ではないけれど。