第19章 能ある烏は翼を隠す
キジマさんは脚を挫いた子からビブスを受け取ってそれを着た。そして、飛雄の元へ向かう。審判台に立つ飛雄を上目遣いで見上げたキジマさん。
「影山くん…私、頑張るから見ててね」
「?まあ、審判なんで」
「そうじゃなくて、応援してほしい」
そう言ってキジマさんは飛雄に手を差し出した。
っ…いやだ、
『!』
え?…私…いまどうして、
『………』
どうして飛雄にその手を取らないでほしいって思ったんだろう。
「?…はあ」
その手を取った飛雄に、
どうして胸が痛むんだろう。
コートに入ったキジマさんは満足気な顔で私を見た。
『……ッ』
これまでに何度か感じた、何かが心にのしかかっているような重さ…そして心が色をなくし、真っ黒に染まっていくような感覚。
説明のできないぐちゃぐちゃとした感情に支配される。
この気持ちはなに、
この痛みはなに、
知らない、
分からない、
この焦燥感も、
この不安感も、
この苛立ちも、