第19章 能ある烏は翼を隠す
その後、私たちは潔子先輩の試合を観ていた。
「「潔子さーん!」」
『潔子せんぱーい!』
「…ちょっと、恥ずかしいからやめて」
バレーをする潔子先輩は新鮮だった。運動部だったという話を聞いたことがあったけど、たしかに身のこなしが運動部のそれ。3年間バレーを誰よりも見てきたんだなぁ…。
「潔子さんの体育でのお姿を見られるなんて、俺は前世でどんな徳を積んだのだろうか」
「龍、俺も同じことを考えていた…そしてお前もだろう鈴木」
『はい、もちろん私もです』
「田中に西谷…お前ら、なんで1年の鈴木さんと肩組んで…」
「「え?」」
2人は私の顔を見て固まった。
『先輩?』
「…たたたた、たしかにそうだぜ」
「かか…考えてみれば確かにそうだ、何してんだよお前!お前は元々そっちの枠じゃねえかよ!」
『…枠?』
「あー思い出したんですね」
「ああ、俺には月島と山口が鈴木と同じクラスだということを羨んだ日もあった」
「ッハハ、鈴木バリア復活ですね」
「月島め!」
『なっ…もう先輩たち、そういうイジりしないって約束してくれたじゃないですか!』
「イジってねえよ!」
「そうだ、これは男のサガってやつで!」
『はー悲しい、あー悲しい』
「「やめてくれ!」」
その時、潔子先輩がサービスエースを決めた。
「「潔子さーん、ナイッサー!」」
『潔子先輩、ナイッサー!』
「だから恥ずかしいってば」
「鈴木、1年のコート試合終わったみたい」
『え?あっ、ほんとだ!先輩、私試合行きます!』
「お?マジか、応援行く!」
「頑張れよー!」
『ありがとうございます!』
私はツッキーと1年コートに戻った。