第17章 IH予選 2日目
街を綺麗に染めるオレンジ色。いつもの場所に並んで座り、それを2人でじっと眺めていた。前に来たのは、白鳥沢学園の合格発表の日。あの日は同じように並びながら極寒の中、肉まんを食べた。割った肉まんから漂う湯気に感激して2人で声を上げたことを思い出す。
『…っはは!』
「なんだよ」
『肉まんのさ』
「あー…」
『あれ?影山くん、目が赤いね』
「おめーもだよ、鼻水女」
『ド直球の悪口じゃない?』
「事実だろ」
『…影山くん、どうして私が泣いてたって気付いたの?』
「お前、試合前からおかしかったろ。どうせバカみたいに余計なこと考えてひとりでウジウジ悩んでたんだろ、ほんとバカだよな」
『一言どころか二言も三言も余計です!』
「それこそ事実じゃねえか」
『…んぬ、ん』
「もう余計なこと考え込むんじゃねーよ」
『……ん、』
少しの沈黙。チラリと横を見ると、飛雄は遠くの空を見ていた。
『…今日から新しいスタートなわけじゃん?』
「おう」
『影山くんはすぐに走り出せるの?』
「…ったりめーだ」
『及川さんの力を目の当たりにしても?』
「あ゙?俺があの人に勝てねえとでも言いたいのかよ」
『あはは、超意識してる』
「うっせえな!」
『大丈夫、飛雄が敵わない人なんていないから』
「……」
『そっか…すぐに走り出すんだね、強いな』
「次は春高予選だ」
『…春高』
「約束しただろ、連れてくって」
『………』
「言っとくけどお前、もう泣けねえぞ」
『え?』
「もう、負けねえから」
真っ直ぐに私を見た飛雄の濃紺の目。その深い青にオレンジの光が差し込んで、キラキラと輝いていた。もっと奥が見たくなる、深くまで覗いてみたくなる。
『……吸い込まないで、』
「は?」