第17章 IH予選 2日目
「居酒屋おすわり…?」
「ああ、ホラ入れ」
「「「こんちわっす」」」
「はいはい、いらっしゃい」
「おばちゃん悪い、開店前に」
「なぁんのお〜、こんなの前はしょっちゅうだったじゃないの」
テーブルの上には美味しそうな料理が沢山並んでいた。
「走ったりとか、跳んだりとか、筋肉に負荷がかかれば筋繊維が切れる。試合後の今なんか筋繊維ブッチブチだ、それを飯食って修復する、そうやって筋肉がつく、そうやって強くなる…だから食え、ちゃんとした飯をな」
「「「いただきます」」」
みんなは手を合わせ箸を持った。そして少しずつ口に料理を運んでいく。
『………』
「鈴木、食事の大切さはお前が1番よく知ってるだろ。ほら食え」
『はい…いただきます』
私も箸を持ち上げて手を合わせた。目の前でボロボロと涙を流しながら食べ進めるみんなの姿に、目の奥がクンッと熱くなる。
悔しい、どうしても勝ちたかった。
その思いで胸がいっぱいだった。
でも私は選手ではないし、ベンチにすら存在することもできない。そんな私が敗北を悔しく思うなんて、失礼でお門違いなことではないだろうか。
『……ッ…』
じわじわとせり上がる涙を何度も飲み込んで、料理を口に運んだ。