第17章 IH予選 2日目
「はは…まぁわかってたけどやっぱキツいな」
『………』
「じゃあこれだけは教えてよ。結局鈴木と影山ってどういう関係?」
『実は…幼なじみなの』
「えっ、幼なじみ?」
『うん、生まれた頃からの幼なじみ』
「……まって、頭が追いついてこない…ただ幼なじみってだけでお互いに知らないフリしてたってこと?」
『うん、全部私のわがままで…影山くんを巻き込んで隠してたんだ、ごめん』
「別に隠すようなことじゃないじゃん」
『…まぁ、そうなんだけど…ちょっとね』
「じゃあ、付き合ってないのは本当なわけ?」
『うん、それは嘘じゃない』
「…ふーん、へえ…ああそう」
『ねえ国見くん、そろそろ本当に心配だから早く着替えてほしい』
「すっかりマネージャーだね、鈴木」
『明日だって試合でしょ?気にもなるよ』
「じゃあ明日のためにパワーちょうだい、2試合は流石にバッテリー切れ」
そう言って国見くんは手を差し出した。
『うん、明日頑張っ……!』
私がその手を握るとグンッと強い力で引かれる。そして、胸に飛び込んだ私を国見くんは強く抱き締めた。
『わ、ちょ…っ、国見くん!』
「充電、なんてね……俺も大好きだよ、美里」
『!』
パッと離れた国見くんは、いたずらっ子のような顔をしていた。
『く…くにみくん、』
「いいじゃん1回くらい、思い出にさ」
『…よくない!』
「俺のこと好き?」
『………』
「さっき言ってくれたじゃん、国見くんのこと大好きって」
『そ…それは』
「もう1回言ってよ」
『…いえない』
「だめ?」
『だめ…』
「…ねえ、そんなに可愛い顔しないでくれる?キスしたくなるじゃん」
『……はあっ!?』
「ッハハ!冗談だよ。じゃーな、鈴木…ありがとう」
『…うん、またね国見くん』
背を向けて去っていく国見くんを見ながら、私は暴れる心臓に手をやった。ユニフォームに染みた汗でほんの少し私のジャージが湿っている。国見くんに抱き締められるなんて、名前で呼ばれるなんて、大好きと言われるだなんて…
── キスしたくなるじゃん
『!っ…なんなの、もう』
私はわけも分からず熱い頬に手を当てて、火照りを冷ましながら走った。