第17章 IH予選 2日目
「あれ…鈴木の幼なじみヤローじゃねえか?」
「ですね」
『国見くん?…どうしたの?』
「鈴木に、話があって」
『…そんなことより汗…ユニフォームのままだと風邪引いちゃう』
「そんなのどうでもいい」
『よくないよ!早く着替え』
「お前のことが好きだ」
『……えっ』
元々私は列の後ろの方にいたから、振り返った私の後ろにはコーチや先生を含めた烏野のメンバーが全員いる。そんな状況で国見くんが突然そんなことを言い出すものだから驚いてしまった。
「…お、俺たち先行こうか?」
『あ…えっと、すみません…』
立ち去るみんなの足音が通路に響く。
「…俺、中2からずっと鈴木のことが好きだった。鈴木は俺の気持ちに気付いてなかったし、仲良くいられるならそれでもいいと思ってた。でも高校離れてみて、近くにいるうちに自分の気持ちを伝えなかったこと、めっちゃ後悔した。そんでこの前、自分からじゃなくそれが鈴木に伝わって…すげえ悔しかった」
国見くんの目は私の後ろ、恐らく立ち去る飛雄を見ていた。
「でも何よりキツかったのは、あのあとも鈴木は俺と普通に会話ができたってこと」
『………』
「全く意識されずに、あの日のことをなかったことにされてるのがしんどかった」
『…ごめん』
「だからもう一度、今度は自分の口から言いたかった、なかったことになんて出来ないように…お前が好きだって」
汗が鬱陶しいのか、国見くんは前髪をかき上げた。