第17章 IH予選 2日目
水道に行くと、2人はすぐに見つかった。
『…かげや、』
「謝ってんじゃねえよ!」
日向くんが突然飛雄の胸ぐらに掴みかかった。
そのまま倒れ込む2人。
止めなければ、そう思うのに体が動かない。
すると、私の肩に手が置かれた。そしてその人は、私を追い越して2人に近づいていく。
『…せ、先生』
「ミーティング、始まってしまいますよ」
いつもの優しい声だ。
「今日も素晴らしい活躍でしたよ、2人とも」
「……でも、負けました」
「確かに負けました、でも実りある試合だったのでは?」
「………」
「“負け” は弱さの証明ですか?」
それでいて、芯のある凛と響くような声。
「君たちにとって負けは試練なんじゃないですか?地に這いつくばったあと、また立って歩けるのかという。君たちがそこに這いつくばったままならば、それこそが弱さの証明です」
2人はその言葉を聞いて、スッと立ち上がる。
そしてくるっと振り返った先生は、私に優しく笑いかけてくれた。
『………』
私の横を先生と日向くんが通り過ぎる。
飛雄の目を見れずにその場で立ち尽くしていると、すれ違う瞬間に手首を掴まれた。
『か…影山くん…っ?』
「……行くぞ」
そのまま数歩歩いて私の体の進行方向を変えると、パッとその手は離れた。
『……うん』
私は駆け足で3人の背中を追った。