第2章 白鳥沢受けることにした
「お茶?牛乳?コーヒー?」
『なに?』
「牛乳」
はいはーいと母が牛乳を差し出した先は、私の隣だった。
『わっ!飛雄いつからいたの』
「今」
私はスマホで県内の公立高校を調べるのに夢中になっていて、飛雄がきたことに気が付かなかった。
「真剣な顔してなにしてたんだよ」
『んー?どこの高校にしようかなって』
「なにが」
『だから、どこの高校に通おうかな〜って』
「バカ、さっき合格発表見てきたろ」
『私、白鳥沢学園行かないよ』
「……ッ!?」
飛雄は飲んでいた牛乳を私目掛けて吹き出した。父と母はそれを心底面白そうに見やりながらいそいそとテーブルを拭く。
『っわ、ちょねえやだ、よりによって牛乳!』
「うぇ…ッ……はァ!?」
飛雄は私を指さしながら両親を音がしそうなくらいの勢いで見る。
「うん、まあ、そういうこと」
「飛雄、時間ないんだから早く決めないとね」
ギギキ…とこちらに顔を向けた飛雄は、身を乗り出した。
「は、お前、まじバッッカじゃねえの!?!」
『やめてくれよ飛雄くん、バカはどっちだい』
「そういうのいいんだよ!」
『それしかないよ』
「どうすんだよ、白鳥沢!」
『もういいの、白鳥沢!』
「なんで!?」
…なんでと言われても、
そういう気持ちを込めて目を見つめ返す。
『………』
「んだよ」
『…だからもういいの!そんなことよりさ、どこの高校行くか決めた?』
私がそう言うと、飛雄は魂が抜けたようにイスの背もたれに伸びた、そしてそのあとテーブルに突っ伏して起きなくなった。
牛乳を被ったことを思い出し着替えてくると伝えると、小さな声で「ぉぅ」と返ってきた。