第2章 白鳥沢受けることにした
影山 side
美里が階段を上る音が聞こえる。
俺はコップの汗をティッシュで拭きながら声を掛ける。
「お父さんたち…反対は?」
「してないしてない、丸〜く収まってる」
「うん、美里の選択肢だから」
「そうそう、選択肢」
「いやだけど、いいの?白鳥沢だぜ」
「そりゃあ、親として惜しくないとは言わないけど、いいんだよ。通うのは美里自身だしな。それに、咲く花はどこでだって咲く」
「ん…でもあいつ、いつか後悔しないかな」
「それは飛雄、お前次第だよ」
「俺?」
「だからさ飛雄、美里と高校まででもいいから、もう少しだけ一緒にいてやってくれよ」
「俺は……」
「ん?」
「高校までで終わらす気…ねぇけど」
「…そう、か」
「………ふふ」
パタパタと階段を降りる音がして振り返る。
『お母さ〜ん、牛乳かかったから制服洗濯機に入れるけどいい?』
その声に美里の母が立ち上がり洗面所に歩いていった。
「飛雄」
「ん?」
「…頼むわ」
「…ッス」
『ん、なに?お父さんたち何話してたの?』
「な、なんでもねえ」
『も〜、また汚すから飛雄はお茶飲みなよ』
「身長伸ばしてんだよ」
『もういらないでしょ』
「まだまだ足りねえ、これからなんだよ!ってかお前こそ飲めよ!」
『あ、そういや今朝のチビまだ許してないけど!?』
「あのままだったらお前潰れてただろうが」
「はいはいありがとうございました!っても〜飛雄がうるさいからお腹すいたじゃん…お母さんなんかない?』
その言葉を聞いた俺はハッとしてポケットの1000円札をテーブルの上に出した。
「これ、もしかしてそういうことか!?」
『なにそれ』
「母さんが美里に肉まん奢れって」
「あっはははは!!アサちゃん、肉まんて」
「白鳥沢が肉まんに化けたな、ヒダカめ!」
うちの両親は先に聞いてたのか、
美里が白鳥沢を辞退することを。
だったら、あの答えは
絶対に肉まんじゃなかった。