第17章 IH予選 2日目
試合開始10分前
私は早々にスタンド席へ上がってきた。
─押っせー押せ押せ押せ押せ青城!
広くガランとした烏野スタンド席にひとり。
多くの部員たちから発せられる青城の応援を聞きながら目を瞑る。
『……ふぅ』
長く息をついてから、手元のスコアをバインダーに挟みボールペンを握った。
空欄だった相手チーム名を埋めていく。
『……あれ?』
ミミズの這ったように震えた青葉城西という文字。そこで私は、自分がいかに緊張していたのかを思い知った。
私は急いでコートの中を見下ろす。
みんなはどうだろう、手は震えていないだろうか。緊張で固く冷えてはいないだろうか。
『……っ…』
どうして私はすぐにスタンド席へ上がってきてしまったのだろう。どうして昨日のようにみんなの手を握りマッサージを施してこなかったのだろう。
マネージャーとして出来ることはなんでもすると誓ったのに。
その答えは自分が一番よく分かっていた。
いや、今ならまだ…
私がバッと身体を階段に向けると、そこには嶋田さんと滝ノ上さんが歩いてきていた。