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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第17章 IH予選 2日目


影山 side


「『いってきます』」


──インターハイ予選2日目




『ねえ、飛雄?』

「なんだ」


『昨日の合図のことなんだけど、』



“昨日の合図のこと” とは、俺と日向の速攻の合図のこと。

その合図は、急遽スガさんが考えてくれたから美里は知らなかった……はずなのに、昨夜家に帰って美里の書いたスコアを見ると得点箇所に “こい” と “くれ” の文字があった。

すぐさま美里に聞くと、こいつはこう答えた。


──『…ああ、そのことか。日向くんが同じように切り込んで飛んでも、飛雄がトスを上げる時と上げない時があることに途中で気がついてさ』

──『それで注意深く見てたら、日向くんって飛ぶ時に毎回丁寧に大きな声で叫ぶなあって…その言葉に規則性があったから記録とってみたんだけど、ビンゴだった?』


その瞬間、俺はすげえ混乱した。この合図は一般的に分かりやすいものだったのか、それともこいつだからこそ分かったものなのか。



『…やっぱり及川さんも気付くんじゃないかな』

「なんで」

『昨日及川さんのセットアップを何回も見て、自分のチームはもちろんなんだけど、相手のこともすごい見てた気がするんだよね…レシーブの不調とかブロックの癖とか』

「…そうだな」


美里の言う通りだ。中学時代のゲームの時も及川さんはネットを挟むとこちらをまるで研究対象かのように鋭い目で見てきた。あの目を敵に回す恐ろしさは、このチームで一番知っているつもりだ。


『まあでも関係ないか。だって、気付かれるかもって可能性に気付けただけ、こっちの方がまだ一歩先にいるもんね』

「おう」



美里が昨日合図に気が付いた。


その事実だけで、誰かが合図に気付く可能性が0じゃなくなったということを知れた。それで十分だ。



『は〜い、飛雄くん肩の力抜いて…』

「………」

『Repeat after me “俺たちは強い”』

「…俺たちは、強い」

『上出来!』


大袈裟に笑顔を浮かべる美里を見て、無駄な緊張が消えていくのを感じた。



「今日も勝つ」

『おう!』


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