第16章 IH予選 初日
菅原 side
「…影山、いつもよりピリピリしてる感じするな」
「………」
確かに俺もそう感じる。
明日は青城との試合。
及川との直接対決だもんな…。
影山と及川、中学時代に何があったのかは知らないけど、お互いに対して強く意識してるのが伝わってくる。影山が先輩の及川をっていうのならまだ分かるけど、あの及川が後輩の影山を意識するって…やっぱり影山ってすげえんだな。
「…あ、鈴木がいった」
誰も近づくことができないハリネズミのような刺々しいオーラを放つ影山の隣に鈴木が並んだ。
「そういや、今日の鈴木には感動したな〜」
「俺も」
「で、結局何言われたの?」
「「………」」
「なんだよ、お前ら!」
「いや…なんかな」
「あぁ…言葉にすると消えちゃいそうでさ」
「は?」
「自分の中で大事にしておきたい」
「へえ、そうですか」
乙女みたいなことを言い出した2人を見ると、嬉しそうな顔をしていた。鈴木が声をかけたあとのアイツらは、変な緊張も取り払われていつも通りに戻っていた。だからこそ俺は気になったんだ、鈴木はみんなに何を言ったんだろうって。
でも鈴木はスタメンの中で唯一影山にだけは声を掛けなかった。もしあの2人がそういう関係ならば、きっと一番に声を掛けたかったであろう相手なのに。
「………」
少し先を歩く2人を見る。
何を話しているのかはわからないけど、鈴木に何かを言われた影山からは先程の刺々しいオーラが消えていた。
「…鈴木すげえ」
あの2人って、本当に不思議だ。
そのあとで、日向が2人に駆け寄っていく。
「試合には勝つ、勝たなきゃ先に進めねえ!」
影山から聞こえた言葉に、俺たちは思わず笑う。
「影山頼もしいなあ」
「だな」
「スガ、旭」
「ん?」
「明日も生き残るぞ」
「─おう」