第16章 IH予選 初日
体育館の入口から中を覗くと、真横からサーブが見える良いポイントを見つけた。ちょうど及川さんのサーブトスが上がる。
『……すごいしなり』
私はスマホのカメラアプリを起動してその一連の動作を動画に収めた。
私はそこでずっと試合を眺めていた。試合の展開は早く、あっという間に青城はマッチポイントを迎えた。
ふわっとした柔らかいトスが上がると、金田一くんはそれを高い打点から振り下ろした。
ドッ
『…綺麗なセットアップ』
すると、整列のためにエンドラインへやってきた及川さんと目が合った。その目はまだ試合中のギラついたもので、私はビクッと震える。
「…また明日ね、ピッピちゃん」
及川さんの唇が確かにそう動いた。
私は頭を下げて、荷物置き場へと戻った。