第16章 IH予選 初日
「ねえキジー!例の影山くんって何番?」
「セッターだっけ?9番じゃない?」
「1年の最初で試合出てるのすごくない?」
「へえ!あれがキジーの大好きな影山くんか!」
「ちょっと、やめてください!恥ずかしいじゃないですかぁ!」
…影山くん?
ふと気になって目を向けると、キジーと呼ばれた人物と目が合った。
「あ」
『あっ…こんにちは』
「どうも…」
気まずそうに目を逸らしたキジマさんは、私から隠れるように人陰で小さくなった。
キジマさん、女子バレー部だったのか。
それでキジマさんは飛雄のことが好き。
……そういうことか。
私の頭の中で点が線で繋がった。
だから体育着事件の時、あんなに敵意を向けられたのか。
「…ねえあれ、“1年の鈴木さん”?」
「ほんとに男バレのマネやってんじゃん」
「バレー知らないんでしょ?」
「友達がいるから入ったって聞きました」
「まじか、やば…っ!」
『………っ、』
なんか懐かしいな、こういうの。
胸がキュッと痛くなって、妙に頭が締め付けられるような感覚…小学生以来かも。出来ればもう二度と味わいたくなかった痛み。そして、理由のわからない心のズンッとした重み…気持ち悪いな。
「ちょっとそこ、応援しないなら帰っていいよ!」
「「「すみません!」」」
「……ごめん、あとで怒っておく」
注意をしてくれた隣のポニーテールの先輩が私にこっそりと耳打ちした。
『大丈夫です、気にしてないので』
私はそう笑いながら、スコアをつけた。
「…えっ?それ」
『はい?』
「あっ……ごめん、なんでもない」