第16章 IH予選 初日
「…お?」
不思議そうな表情を浮かべながらも、澤村先輩は私の手を取った。緊張で少し冷たく、震えるその手を両手で包むようにマッサージをする。
「!」
『澤村先輩は、烏野の土台です。烏野が再び空に向かって飛び立つことが出来たのは、澤村先輩が烏野の土台を固め続けたからです。他のみんなが思いっきり暴れることが出来るのは、澤村先輩の折れない精神力と冷静に戦況を読む力があるからこそ』
「……鈴木、」
『澤村先輩』
「…ん、」
『澤村先輩は、先輩が思っている以上に私たちにとって頼もしく心強い存在です、それと同時にネットの向こう側からはその存在が隙がなくて恐ろしい。…大丈夫です、いつも通りの先輩でいきましょう』
澤村先輩にだけ届くような声量で伝え、一通りマッサージを終えて握手の形をとりその手をギュッと握る。
「っ…やべえな……」
「な、なんすか大地さん!?」
「顔赤いっす!鈴木に何言われたんすか!?」
「教えない!でも…俄然無敵な気分だよ」
そのまま田中先輩、西谷先輩、旭先輩、そして日向くん、ツッキーにも同じようにマッサージをしながら言葉をかけた。ツッキーは、恥ずかしいからいいと言ってなかなか手を握らせてくれなかった上に、結局目も合わせてくれなかったけれど。
最後は一番奥にいる…飛雄だ。