第2章 白鳥沢受けることにした
影山 side
両親と話したあと、俺は一与さんの仏壇に向き合っていた。
くゆる線香の煙が一与さんの写真に重なって、幽霊となった一与さんがそこにいるかのように思えた。白鳥沢は第一志望だったけど、それこそ本気で受かるとも思ってなくて、見事に撃沈してからは冷静に次の志望校を考えることができていた。
「…白鳥沢に行けば、絶対強い人がいるから」
そこでバレーしたいと思った。
本当にそれだけだった。
美里と離れる、なんてそんなのはこれまでに一度だってなかったから考えたこともなかったけど…冷静に考えてみれば今回の受験ではそうなる可能性しかなかったのだと気付かされた。
一与さんの体調が急変する前は、学校から離れた場所で美里と待ち合わせをして俺の部活が休み日に一緒に病院まで行っていた。看護師に可愛い孫たちが会いに来てくれたんだと毎回のように自慢するから、2人して気恥ずかしかったのをよく覚えている。
いつだったか、美里が英語のスピーチコンテストで優勝してその取材があるからと俺ひとりで病院へ行ったことがあった。
その時に、2人きりの病室で一与さんに美里のことをどう思っているのかと聞かれた。