第16章 IH予選 初日
階段を上がって烏野側のスタンドに向かうと、見覚えのあるジャージが目に入った。
『えっ…』
青葉城西高校だ。
どこで試合を観るか悩んで動けずにいると、突然背後から声を掛けられる。
「あの〜」
振り返ると知らない高校の人たちだった。
『…はい?』
「キミ、超かわいーなと思って!」
「マネージャー?」
『………』
「LINE教えてよ」
「バレーのルールわかる?LINE教えてくれたらルール教えてあげるから」
今日、こんなのばっかりだ。
みんな何しにここに来てるんだろう。
「ねえねえ」
「おねがい!」
『烏野高校』
「…えっ?カラスノ?」
「それがなに?」
『絶対に覚えてください』
「うん、覚える覚える!」
「だからさ、LINE…」
『皆さんと違って、本気でここに勝ちに来ているチームの名前です』
「……え、」
「………」
「へえ、言うねぇ」
突然肩に手が置かれて振り返ると、そこには及川さんが立っていた。それだけじゃない、青城のほかの皆さんもこちらを向いていた。
「せ、青城の及川…」
「やべっ……他もいる」
すると、及川さんはその人たちのジャージを見て嬉しそうに笑った。
「わ〜、千川北?もし大岬にキミらが勝ったら、ウチと当たるじゃん」
「いや……えっと、」
「勝ち残ってよ、絶対」
「………」
「二度とこの子に声掛けられないくらい、バッキバキに叩き潰してあげるからさ」
「………ッ、」
その人たちは、何も言わずに走り去ってしまった。