第16章 IH予選 初日
『……あ、ありがとうございます』
「ううん、俺が来なくてもピッピちゃんなら追っ払えてたよ、きっと」
ピーッ
試合開始を告げる笛の音が聞こえる。
「ねえ、こっちおいで。一緒に観よ」
私は及川さんに背中を押されて、青城の皆さんのところへやってきた。
「おぉ久しぶりだね、鈴木さん」
『入畑監督、溝口さん…みなさんこんにちは』
「「「ちわーす」」」
「そのジャージ、正式にマネージャーになったのかい?」
『はい、青葉城西高校との練習試合を観て入部を決心しました』
「そうか、また会える気がしていたから嬉しいよ」
『こちらこそです、どうもありがとうございます』
私は促されるがままに監督と及川さんの間に座った。
「…今日はサングラス掛けないの?」
そんな声に振り返ると、ジャージで口元の隠れた国見くんが私を見下ろしていた。
『もう、必要ないんだ…堂々と応援できるから』
「ふーん」
『…あ、国見くんごめん、私試合中は立ちたいんだけど邪魔になっちゃうよね?やっぱり別のとこ…』
「別に鈴木が立ってたって見えるし、1人でいたらまた他校生に絡まれるけどいいの?」
『……それは、』
「はぁ〜あ…ここにいて!って素直に言えばいいのにさ、国見ちゃんは全く」
「及川さんそういうのやめてください」
「それにしても、お前あいつら相手によく言ったじゃねえか。かっこよかったぜ」
『そんな…っ!ありがとうございます』
「うんうん、ピッピちゃん偉かったね」
「それに、たしかにあれは遊びに来てる表情じゃねえ…勝ちに来てる表情だ」
立ち上がってコートの中に目を向けると、みんなはただ真っ直ぐに力強い眼差しで相手チームを見つめていた。
私はバインダーに挟んだスコアを撫でて目を瞑る。
『…がんばれ』