第15章 そして、走りだす
「青城との試合の時に家で相談したいって話してたけどあれは影山にだったんだよね?」
『はい、帰ってから私がマネージャーだったらどうかと聞きました。やりにくくなったりしない?って』
「そしたら?」
『別に自分のやることをやるだけだから何も変わらないし、俺が誰かの影響でバレーやりにくくなるような人間だと思ってんのかって言われました』
「ははっ、影山らしいや」
『だからこそ私がやりたいのかやりたくないのかで決めていいって言ってくれて…あの、こんなことを潔子先輩の前で言うのは失礼かもしれないのですが、この経験が将来の役に立つのか、限りある貴重な時間を費やす価値があるのか…私はそこに悩んでたんです』
「気にしないで大丈夫だよ、続けて?」
『でも、影山くんはきっとこれから先どんどん遠くに行っちゃうから…役に立つとか時間の価値とかそんなことより何よりも、今の影山くんを近くで見ていたいと思いました、私が見失わないで追いかけられるように』
「……うん」
『まぁ高校を卒業すれば、寂しくても一旦は離れ離れになっちゃうと思うんですけどね。私も将来のために頑張らなくちゃいけないですし』
「一旦…?美里ちゃんは将来何かやりたいことがあるの?」
『私、通訳士と公認スポーツ栄養士になりたいんです』
「えっ…通訳にスポーツ栄養士…ってそれ、もしかして」
『はい、影山くんのバレーを支えたくて』
私がそう言うと潔子先輩は口元に手をやって目をまん丸にさせた。