第15章 そして、走りだす

練習後の自主練時間。私がいつものようにボールを拾っていると、コーチに声をかけられた。


「なあ、鈴木」

『はい』

「お前、今から俺が挙げる攻撃パターンをホワイトボードに図解してまとめられるか？頭には浮かんでるんだが、再現がな…」

『やってみてもいいですか？』

「おう、頼む！……まずは、セッターにボールが返ったら左右がクロスに走り込んで中央からバックアタック」

『……ブロックを撹乱させるんですね、えっとこんな感じでしょうか？』

「ああー！そうそれ、さすがだな！じゃあ次は…」


コーチはそのまま10個ほどのパターンを挙げた。


『すごいですね、コーチ！こんなにたくさんのパターンを頭の中に置いていたんですか？』

「あー、最近何やっててもずっとこんなん考えちまってよ」

『はは、それは脳が休まらないですね』

「だろ？…よし、明日からはこれを元に練習だな」

『これとか良さそうですね』


私がひとつのパターンを指をさすと、コーチはキョロキョロと周りを伺って小声でこう言った。

「…なあ鈴木さ、お前なんでバレー辞めたんだ？」

『辞めた、ですか？』

「中学までずっとバレーやってきたんだろ？…その、幼なじみ…とよ」

武田先生から聞いてはいたけど、飛雄とのことコーチも本当に知ってたんだな。

『私は彼の練習に付き合う程度で、本格的にバレーをやったことはないですよ』

「はっ！？嘘だろ！？」

『え？嘘じゃないですよ、私中学では家庭科部でしたもん』

「…家庭科部？」

『はい』

「……じゃあなんで、」


「わっ！すっげえ！コーチ、これやるんですか！？」


キラキラとした目で日向くんがホワイトボードにやってきた。


「っお……おう！明日からな」

「わーい！これとか超かっけえ！早くやりてーな、影山」

「お前な、こういうのはまずレシーブが出来ねえと話になんねえんだぞ！」

「わ、わかってるし！」


「あー…鈴木、さっきの話は忘れてくれ」

『？はい』




その後、澤村先輩が自主練を切り上げるよう声を張り上げた。