第2章 白鳥沢受けることにした
家に着いて手を洗いリビングに行くと、両親は並んでテレビを見ながら待っていた。
「おう、おかえり!」
「寒かったでしょ?」
そう言いながら2人は、ダイニングテーブルへと移動した。座れと促されたか思うと、目の前に温かい飲み物が置かれた。
『あのね、合格しました』
「そうか…!ひとまず、お疲れ様」
「白鳥沢に合格なんて、本当によく頑張ったね」
『うん、ありがとう』
「我が家のうっかりさんも今回ばかりは無事だったみたいで何よりだよ」
「ふふふ、ほんとほんと」
『受験票は飛雄が持っててくれたし、ちゃんと解答用紙も見直したし問題なかったよ』
「…そうか」
すると両親はゆるりと顔を見合わせて、寂しそうに、それでいてどこか嬉しそうに笑った。私がそれを不思議に思って眺めていると、父はスポーツのアップを取るような仕草をしながら口を開いた。
「…さ〜て、次は公立か?」
「そうね、あんたもう時間がないんじゃないの?早くどこ受験するか決めないと」
『……え?』
両親の言っていることが理解できなかった。だって、白鳥沢学園に合格したと言ったのだから、そこで私の受験はもう終わりのはず。既に第一志望に合格した人間が、別の学校を受験するなんておかしな話だ。
「なんだ?何を不思議そうな顔して」
『だって、私白鳥沢学園に合格したんだよ?』
「そうだな」
『それなら公立なんて』
「…行きたいのか?白鳥沢に」
バッと私が父の顔を見ると、全て見透かしたような目で私を見つめていた。
『……っ』
「今のお前に白鳥沢へ通う意思があるのならもちろん全く問題ない。なんたって美里自身の実力で掴んだ切符だからな。それに俺たちだって娘が白鳥沢生なんて鼻が高いよ」
『…いつから?』
「ん?」
『いつから私が白鳥沢学園に合格しても、入学はしないって思ってたの?』
「それは」
『いつ…?』
「はじめから、だな」
『はじめから?』
「まあ、絶対入学しないと思っていたわけではなくて、あくまで可能性の話としてだけどな」
両親には白鳥沢受験に対するモチベーションも、こういう結果になるということも全て見えていたということ?
『…それなのに、わかってたのに…受験させてくれたの?』
私立 白鳥沢学園。
受験料もある程度の金額であることを知っていた。