第2章 白鳥沢受けることにした
『…っ…ぅ』
一度認めてしまえば、その感情は輪を掛けて押し寄せてくる。
孤独、不安、焦燥感。中学の校内で仲良く話すなんてことはついに一度もなかったし、廊下ですれ違ったって目すら合わせなかった。そんな幼なじみと離ればなれになるのが、こんなにも寂しいだなんて…私はいつの間にこの幼なじみにここまで依存してしまっていたのだろうか。
「〜〜〜っ!」
飛雄は自分の頭をガシガシと掻いて、自らの首に付けていたネックウォーマーを取り外すと少し乱暴に私に被せた。温かくて飛雄の匂いがした。
『…何もみえ、な』
「はァー…ッ……見んな」
ネックウォーマーのせいで飛雄の声がこもって聞こえる。せめて目だけでも、とこめかみあたりのフリース地の布を少し下げた。するとその場にしゃがみこんで口元を腕で覆いながらチラリとこちらを見上げた飛雄と目が合う。驚いたような焦ったような顔で、睨みつけてくる飛雄。
『っ、…ごめ、ん』
「お、落ち着いたのかよ?」
『ん…もちょ、っと』
スッと立ちあがり珍しく少し屈んで私の目線に合わせた飛雄は、自分の袖を掴んで私の涙を拭い、大層複雑そうな表情をしている。涙こそ落ち着いたものの、泣いた時特有のしゃっくりが治まらない私に、何故か少し困ったように笑った。
「…落ち着いたらとりあえず一回帰って報告」
『ん』
「きっとお母さんたちが気にしてる」
それから少しして、私たちは電車に乗って家に戻った。途中、飛雄はずっと私のことを気にかけてくれていた。自分だって大きなショックを受けたばかりだというのに。