第15章 そして、走りだす
月島 side
「はい、そこまで〜」
英語の小テストの終わりを先生が告げる。
「隣のやつと交換しろ」
ため息やらなにやらが、そこかしこから聞こえた。
『はい』
「うん」
鈴木と答案用紙を交換して、その回答を見る。
相変わらず綺麗な字だな。
答え合わせをしていくと、途中で先生の話したものと異なる表現を見つけた。僕が丸をつけるか悩んでいると、鈴木は先生に向かって大きく手を挙げた。
『先生、すみません!私、今のところをAchievementで解釈しまったのですが、それは間違いでしょうか?』
「おーなるほど、たしかにその解釈も誤りじゃない。…というより、むしろネイティブ寄りだ。もし同じ回答してるやついたら丸でいいぞ〜」
鈴木を見ると、嬉しそうに頬杖をついていた。
この文章にはそんな表現方法もあるのか。
入試満点、
言わずもがな現時点の学年トップ。
勉強で僕が彼女に敵うわけがない。そんなことは入学式からわかっていたというのに、僕は少しだけ悔しい気持ちになった。
この気持ちは負けず嫌いからか、はたまた別の厄介な思いからなのか。
「……はぁ、めんどくさ」
『はい、ツッキー』
「ん、」
手元に返ってきた用紙には、正答には先生のような丸を、誤った箇所にはチェックマークと正しいであろう英文が添えられていた。