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【HQ】初恋に溺れて息ができない【影山飛雄】

第15章 そして、走りだす


5月中旬。

合宿から数週間、気持ちを新たに走り出した烏野バレー部の目標は《全国高等学校総合体育大会》通称インターハイでゴミ捨て場の決戦を実現させることだった。


全国大会出場に向けて、部の空気は燃えに燃えまくっていた。


「おーし、今日の練習は以上だ!クールダウンしっかりな、お疲れした!」

「「「シターッ!」」」


私はいつものように体育館の至るところに置かれたドリンクのボトルを回収していた。




「うぉ!ホントだ、すげえ!写真でけー!」



田中先輩の声に目を向けると、何やら2、3年生が集まって雑誌を見ていた。そこに飛雄と日向くんが加わる。



「なんスか!?どしたんスか!?」

「ホレ」

「高校注目選手ピックアップ…?」

「今年の注目選手の中でも特に注目!ってなってる3人の中に、白鳥沢の “ウシワカ” が入ってんだよ」


白鳥沢…この学校名を聞くと、私の頭の中にはあの牛島さんが浮かぶ。白鳥沢学園を辞退すると決めた時、唯一の心残りが牛島さんだった。


──「サポート程度でいい、またバレーしよう」


白鳥沢学園に入学してこなかった私に、少しでもガッカリしてくれたのだろうか…いやいや、何考えてるんだ私、さすがに自惚れすぎだ。


『………』


きっと、ただの受験生だった私のことなんてもう覚えてすらいないだろう。


でも、もし次に会う機会があったら、あの引き出しに大切にしまったままの保冷剤を返さなくちゃ。




私は体育館の外の水道で、ボトルをひとつひとつ丁寧に洗った。



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