第14章 “ネコ” と “カラス” の対峙
すると、廊下を歩く音が段々と近づいてきて、私のすぐ後ろで止まった。
ガラッ
『ぅ…っわ!』
背もたれにしていたドアが突然開かれて、後ろにつんのめった私の体重が別の何かに支えられる。そろりと上を向くと、立ったまま私を見下ろす飛雄と目が合った。
「泣き虫」
『……っ…』
この小馬鹿にしたような、それでいて心配しているような矛盾した目を見つめながら、私はズビ、と鼻をすすって涙を袖で拭いた。
「ハハッ、お前涙腺ぶっ壊れてんじゃねえの?」
『…ッ…そう、かも』
「こんなとこで何泣いてんだよ」
そう言いながら、飛雄は私と目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
『うれし、かったの』
「………」
『認めてくれたこと…』
「みんな前から認めてたろ、お前のこと」
『みんなじゃなくて、』
「ん?」
『飛雄が、こんなにも認めてくれていたことが嬉しかった』
「……っ!」
『お父さんたちの前で、私のことをあんな風に話してくれて…すごく嬉しかった』
「……そんだけのことで」
“そんだけのこと”なんかじゃない、私は俯きながら頭を横に振った。
『ありがとう、飛雄…』
「それはこっちのセリフだろ」
『……え?』
「力になりたいとか、支えたいとか」
『………』
「お前のそういうの、全部伝わってる」
そして飛雄は私の頭に手を置いて、穏やかな声でこう言った。
「ありがとう」
『……とび、ぉわっ…』
飛雄の顔を見ようと顔を上げたら、頭に置かれた手に力が入って叶わなかった。それだけでなく、髪がぐしゃぐしゃに乱される。
『な、なにすんの!顔見えない』
「…っ、見なくていい!」
『なんで!』
「うるせえ、そんなことより、お前は夜1人で寝れるようになれよ!」
『あ…っそれまだ言う!?もう良いじゃん!』
「良くねえ、清水先輩来なかったらどうするつもりだったんだよ!」
『……それは、』
「1人で寝れないなんてガキか、バーカ!」
『バカっていうほうがバカなんだよ、バーカ!』
声をききつけたお父さんとパパがやってきて、やっぱりお前たち2人が家にいると賑やかだと笑われた。