第14章 “ネコ” と “カラス” の対峙
「『ただいま』」
「おう、おかえり!」
「合宿はどうだった?」
合宿が終わって久しぶりに家に帰ってきた。リビングには飛雄の両親もいて既に宴会状態だった。
「今日東京の学校と練習試合して負けた」
「そうか、負けから学ぶものは大きいな」
「そうだな」
「ん、でも次は負けねえ」
「あれ?美里、そのジャージ」
『うん!私の部活ジャージもきたの!』
「いいじゃない、似合う似合う!」
「でもまさか…2人が同じ部活に入るなんてね」
並んで立っていた私たちは目を合わせる。
『…うん、自分でもびっくりしてる』
「美里は中学では家庭科部だったし、運動部なんて初めてだろ。大丈夫か、着いていけそうか?」
『……えっと、』
大丈夫、そう自信を持って答えたかったけれど、まだまだ足りてないところも自覚していた。
「お父さん、美里なら大丈夫」
『…飛雄?』
「練習サポートしながら毎日俺たちの体に必要な栄養の飯作って、この短期間でバレーの審判まで覚えちまったし、試合の記録、反省と分析に、怪我した人のテーピングも完璧にやっててみんな驚いてた」
『!』
「そうか、それはすごいな」
「先輩たちも、こいつに負けてらんないってすげえやる気だったし、俺もそう思った」
『…………』
飛雄の言葉に、私の視界が水中にいるかのようにゆらゆらと揺れ始める。
「だから大丈夫。美里はすげえヤツだから」
『……っ…』
私は走って洗面所まで行くと、引き戸を締めてしゃがみこんだ。
『…ぅ…う、…っ』
堰を切ったように溢れ出る熱い涙が頬を濡らす。
無駄じゃなかった、全部、ぜんぶ。
嬉しかった。
ただただ、嬉しかった。
ずっと先にいて
追いつきたい、
力になりたい、
支えになりたい、
そう思っていた飛雄が、
私を、こんなにも認めてくれていたことが。