第14章 “ネコ” と “カラス” の対峙
日向くんにそう言われてパッとお互いの顔を見ると、私の目線に合わせてスコアを下げてくれていたからか、体を屈めた飛雄の顔が真横にあった。体だって完全に触れ合っている。私たちにとっては特に問題のない、むしろ普通の距離感だったけれど、他の人から見ればきっと普通では済ませられないほどの近さだったのだろう。そのことに、私たちはほぼ同時に気が付いた。
「おわっ!」
『ぎゃっ!』
私たちは大袈裟に距離を取った。
「ハハッ!なにしてんだよお前ら!」
「いや〜俺もたしかにすげえ近いなとは思ってたんだけど、2人とも試合の話に夢中だったから」
「バレーのことで頭がいっぱいだったのか?」
『はい…完全に』
「スコアに集中してました」
すると菅原先輩が何故かやたらと焦った様子でこう言った。
「ま、ま…まぁいいじゃん!ここで手繋いでたわけじゃないんだし…!」
「はは、そりゃ影山と鈴木が手繋いでたらびっくりするわ!」
「だ…だよな!?」
「?鈴木さんと手なんか繋ぐわけないじゃないですか」
『絶対にありえないですね』
「そっ、そうだよなぁ!?…そのはず、なんだけどな」
『「?」』
飛雄と毎日外でも顔を合わせるようになって、前よりも確実に他人のフリが下手になっているのを感じる。他のみんなと同じように接する方が自然だと思っていたけれど、私たちの場合はそれだとボロが出やすい。自分で自分の首を絞めることにならないように、気をつけていかないとなと思った。
「おーし、じゃあ1本締めて上がれー!」
「「「オスッ!」」」