第14章 “ネコ” と “カラス” の対峙
練習が終わって各自クールダウンを行っている。
そんな中、飛雄が立ったまま私の書いたスコアをじっと見ていた。コーチはああいう風に評価をしてくれたけど、飛雄はそのスコアを見てどう感じるんだろう。それが気になって様子を伺っているとふいに飛雄と目が合った。何か言いたそうな目が“こっちに来い”と伝えてくる。直接声をかけられたわけではないけれど、周りに人がいる中で珍しいなと思いながら私は近付いた。
『影山くん、お疲れ様』
「あぁ…鈴木さん、このマーク何だ?」
『あ、それは孤爪さ…音駒のセッターが視線でブロックを釣って決まった攻撃につけてみた。こっち向いてる時しか分からないから全部じゃないけど』
「じゃあこれは?」
『日向くんをマークしていた人が日向くんのボールに触った回数だよ』
「…これは?」
『それは、影山くんがトス上げたあとに顔を顰めた回数』
「マジか…んなとこまで見えてんのかよ」
『些細なポイントも、今後の大事な情報だと思うからとりあえず書いてみてるんだ』
「…情報の宝庫」
『それはわからないけど…』
「そういや、さっきの反省で鈴木さんが言ってたのは、どのプレー間のことだ?」
『あぁ、それはね…ここのこと』
「ここか…なるほど、たしか俺の記憶では、こん時って前衛が薄いローテだった気がすんだよな」
『そうそう!ここでちょうど日向くんと黒尾さんがマッチアップしてるときだったから、ブロックの時の高さはちょっとばらつきが出てたかもしれない』
「ただ、日向の攻撃には向こうの1番が慣れてなかったからトス自体はまだ比較的上げやすかった」
『うん、そうだと思う。でもやっぱり犬岡さんみたいに…あ、日向くんを追いかけてた人ね、あの人みたいに体力を削りながらでも回数をこなして慣れようとしてくる人は今後もきっと』
「なあ、影山と鈴木さんさぁ」
突然、日向くんに声を掛けられた。
『ん?』
「あ?」
「すっげえ距離近くない?」