第14章 “ネコ” と “カラス” の対峙
黒尾 side
この子は俺を椅子に座らせて、足の間にしゃがみ込んだ。
「………」
なんなんだ、この子。
俺そんなに痛そうな顔してた?
ブロックで指掠めてから、たしかにずっと痛えなとは思ってたけど…こんなん誰も気づいていなかったでしょーに…。
『伸ばすと痛いですか?曲げると痛いですか?』
「あ…えっと、曲げると…かな」
『わかりました、バトルウィンのテーピングを使いますけど大丈夫ですか?』
「…テーピングのブランドにこだわりはないよ」
『では固定していきます、キツかったら教えてください』
テキパキと、テーピングで俺の指を固定していく。
普段自分でやる時は適当にグルグルと巻き付けることしかしたことがなかったが、この子のテーピングはアンカー・Xサポート・サーキュラーと至れり尽くせりで丁寧だった。
これまで一体どれだけ経験を積んできたのだろう。
3分という短い時間をしっかりと余らせてこの子は俺を見上げた。
『どうですか?きちんと固定できていますか?』
「……すげえ、痛くねえ」
『良かったです』
ふと椅子を見ると、この子が記していたと思われるスコア表が目に入った。それを持ち上げて見ると、これまでに見た事がないくらいに試合の状況が纏められていた。
「……お前、やるね」
『い……いえ、そんな!』
「サンキュ……助かった」
ポン、と頭に手を置いて俺は監督の元へと向かった。