第2章 白鳥沢受けることにした
『…おはよ』
「……はよ」
私たちは同時に欠伸をしながら朝日を浴びた。
ついに今日は白鳥沢学園高校の一般入試日。一般入試は2日間に分けて行われ、今日と明日がその試験日だ。
試験会場である白鳥沢学園へは電車に乗って向かうつもりだったが、何が起こるか分からないからと私の父が車で送ってくれることになった。
車に乗ると飛雄の両親と私の母が窓に近づいた。
「飛雄、迷ったらもうなんでもいいから書けよ!」
「そうそう、もうなんでもいいんだから!」
「ねぇ2人とも息子にかける言葉もっとないの!?飛雄焦ったら問題飛ばしていいんだから、落ち着いてね」
「ん、わかった、そうする」
「美里は、まあ大丈夫か。いつも通りいけよ」
「そうそう、あんたはいつも通りで大丈夫!」
「いつも通りじゃだめ!うっかりミスしないこと!最後に絶対解答用紙の見直し!名前書いてなかったなんてことのないようにね!わかった!?」
『あはは、気を付けるってば』
「じゃあ行ってくる」
「ああよろしく、運転注意しろよ」
「じゃあ2人とも頑張って!」
動き出す車。
飛雄が窓を閉めて小さく息を吐いた。
『なに、緊張してんの?』
「そこそこ。美里は?」
『そこそこ』
「なんだよお前らそこそこって!ほら、最後の追い込みタイムだぞ?ノート見たり、教科書見たりしなくていいのかよ?」
『もうお腹いっぱい』
「だな」
「暗記パンでも食ったんか?」
学校に近くなると参考書を片手に歩く学生の姿もちらほらと出てきた。
「美里」
『ん?』
「ほら、受験票」
『ありがと』
昔から私が大切な時にこそやらかすことを知っているからか、昨日のうちに「お前の受験票よこせ」と預かってくれていた。
『しっかりしてるよね、飛雄は』
「だろ?」
『なんかムカつく』
「お、2人とも、見えてきたぞ〜」
門の近くでは在校生たちが受験生へエールを送っていた。身を乗り出してキョロキョロと牛島さんを探してみたが、見当たらずと座席に戻る。
「なんだよ?」
『いや、願書の時に先輩と知り合ったんだけどいるかなぁって』
「…願書出しにきて知り合うとかコミュ力高ぇな」
『だろ?』
「うっせ」
それから私たちは初日、2日目と試験を終えた。飛雄は暫くぐったりしていた。