第2章 白鳥沢受けることにした
天童 side
「わかわか、としとし、若利くぅーん」
「…天童すまない、遅くなった」
「渡せたの?スマホ」
「ああ」
「ねえどうだった?」
「どう、とは?」
「えー、だって若利くんが女の子追っかけて走ってくのなんて初めて見たからさ。それにカ〜ンワイイ子だったじゃない?」
「鈴木だ」
「名前聞けたんだ?」
「料理や菓子を作り、裁縫もするそうだ」
「え、なになに若利くん趣味まで聞いたの!?積極的じゃーん!イマドキ珍しい随分家庭的な子だね。すんごくいいと思うよ、俺。ところであの子なんでウチにいたの?受験生?」
「ああ、白鳥沢を受験するらしい」
「そっかそっかぁ〜!若利くんちゃんと言った?鈴木さん白鳥沢受かったら俺といっぱいバレーしようね!待ってるよ!約束だよ!って」
「ああ」
「へーえ、そっかそっかぁ〜!………え?」
思わず足を止めた俺。
「どうした天童」
「んーや、なんでもないヨ」
俺は見てたよ、若利くん。体育館を出ていく前に救急セットから保冷剤をひとつ持っていったところ。この寒い中に保冷剤なんてマジかって思ったけど、あれ今日一発目のサーブだったもんね。男の俺たちだって毎回腕もげてないか確認するくらいだし、女の子の細い腕だったらそりゃ心配になっちゃうよね。
でも正直あの牛島若利が、自分の爆裂サーブを一発で上げたってことよりも、そっち側に興味の矛先がいくこともあるんだなーって驚いた。
「ふふふふ」
「?」
「鈴木さん、サクラサクといいね」
「そうだな」
こういう会話してると、
若利くんも普通の男子高校生だね。
「なぁ、天童」
「うん?」
「俺は牛というより馬のイメージか?」
「ナニソレめっちゃ面白い」