第13章 青天の霹靂とはまさに
菅原 side
青天の霹靂というのは、まさにこのこと。
俺は雷に打たれたかのように、その場から動くことが出来なくなった。
なんで、影山が鈴木の部屋で寝てるんだ…?
ああそうか…影山のことだ。寝ぼけたあいつがトイレのあとに戻る部屋を間違えた可能性、あるよな。うん、あの影山ならやりかねない。そうだ、きっとそうだ。間違えただけ、その他に理由なんて何もない
…なら、
なんで、手ぇ繋いでんだよ!!
そう、影山は鈴木の右手に自分の右手を重ねて、キュッと握っていた。自分が苦し紛れに立てた仮説がガラガラと音を立てて崩れ去っていくのを感じながら、目の前の2人を見つめた。
──「はじめまして」
──『はじめまして』
──「鈴木さんの存在、知らなかったですけどね」
──『うん、私も全く知らなかったですよ』
──「影山、鈴木さんと少しは仲良くなれた?」
──「なれてません」
──『本当に少しも仲良くなれてないので』
「…どこがだよ」
俺は自分の発した声で、我に返った。
一応、部の副主将としてこのままにしておくわけにはいかない。意を決して、2人が眠る部屋の中に足を踏み入れて影山の肩を軽く揺すった。
「…か、影山」
俺がそう声を掛けると、影山は「んん…」と唸って目を擦りながら上体を起こした。
そして、真横の鈴木に視線をやって顔を覗き込んだ。
「……こいつ、」
そう短く発した影山は、すやすやと眠る鈴木のおでこをピンッと弾いて大きな欠伸をしながら部屋を出ていった。
「えっ、……えっ?」
自分の身に起きたことを処理しきれていない俺は、放心状態のまま部屋に取り残された。
なんだったんだ、今の。